らそうなこといって、ぼく自身仁木作品を読むのは本書が初めて^^。本来なら、デビュー作となった江
戸川乱歩賞受賞作の「猫は知っていた」から紐解くべきなのだろうが、どうもこの私立探偵三影潤のこと
が気になってしかたがなかったので、本書を読んでみたというわけなのだ。
事件としては、いたってシンプルな幕開けとなる。資産家である堅岡清太郎の家族内で、度重なる変事が
あり、果ては末娘で6歳になるこのみを誘拐するという脅迫状までが届けられる。警察の介入を好まない
当主の依頼によって事件を調査することになった三影潤の目の前で、第一の殺人が起こる。
いったいこの家族の間で、どんな確執があるというのか?いったい、この悲劇の核にはどんな真相が隠さ
れているというのか?
というのが簡単な導入部の紹介である。このあと三影は様々な妨害にあい、心身ともに傷を負いながらも
事件の真相に肉薄していくのだが、そこで辿りついた真相は、あまりにも悲惨な結果を招くことになるの
である。
三影のキャラクターは孤高でもあるが意外とアットホームな面もあり多少とっつきやすい。どうやら過去
に不幸な体験をしているらしいことが物語の半ばで分るのだが、それはラスト近くになって明かされる。
しかし、その内容があまりにも陳腐なので笑ってしまった。これはもうちょっと深みのある出来事として
描いて欲しかったところだ。
その他の点では、昭和46年に刊行されているという時代のギャップがあるにも関わらず、いま読んでも
まったく遜色ない出来栄えのミステリで、時代風俗に関してもまったく違和感がなかったことに驚いた。
まだこの名探偵の全貌は明らかになってないが、タイプとしてはリューインのアルバート・サムスン系の
知性派探偵に属する静かで鋼の強さをもった男のように思える。もう彼を主人公にした長編はないが、こ
れからは短編を読んでいきたいと思ってる。もしかしたら、こういうタイプは女性に人気があったりする
のかな?