「本が好き!」の献本である。
奇妙奇天烈冒険譚ということだが、これがとんだ食わせものだった。怪しげなタイトルに、ブライトン十二宮、都市伝説、クロノビジョン、悪の秘密組織そしてページを開けばプロローグとエピローグの間になんとも魅力的な十二のタイトルが並んでいる。
第1章 ハングルトンの犬
第2章 センテナリーのケンタウロスの怪事件
第3章 ムールスクームの蟹にまつわる恐るべき謎
第4章 ランズダウンの獅子のいたずら
第5章 ウッディンディーンのカメレオンにまつわる奇妙な事件
第6章 サックヴィルの禿鷹にまつわるおかしな話
第7章 フォーダウンの男の奇怪なる冒険
第8章 ベヴァンディーンの蝙蝠の不可解な事件
第9章 ソルトディーンの種馬に絡む嘘のような冒険談
第10章 ホワイトホークの鳥男
第11章 ウィズディーンの賢人
第12章 コールディーンの猫とむちゃくちゃな謎の結末
どうだろう?この節操のないおもしろそうな章題は。だが、これがまったくのナンセンス。本書のはちゃめちゃなスタイルには、これっぽっちのおもしろ味も感じられなかった。いってみれば、本書を好むか好まないかという境界は、ここで扱われる果てしないギャグの嵐に耐性があるかどうかで決まるといっていい。例えばそれは、『永劫なる知性、教祖の中の教祖、世界の知るもっとも偉大な男、全知の人、完全なる者、オカリナに新たな力を与えし者、神秘の探偵、麻薬愛好家、宇宙刑事、男の中の男』という肩書きをもつミスター・ルーンの行動一つとってもうかがえる。彼は、タクシーに乗ろうが、レストランで食事をしようが、高級ブランド品を買おうが、金はいっさい支払わない。レストランでは食事の最後にねずみの骨を出して因縁をつけ食事代を帳消しにしてしまうし、タクシーにおいては食い下がる運転手を殴り倒す始末。ローマ法皇とは大親友で、キリストの十三番目の使徒で、H・G・ウェルズのタイムマシンを設計したのはこの俺だとのたまうのである。そんな彼と行動を共にする我らが主人公がリズラ、死から蘇った男なのだ。もう、これだけでお腹一杯なのだが、作者はそんな気はサラサラないらしく、ここで書くのが憚られる下ネタ満載のパブの店主ファジオが登場し、繰り返し同じパターンでギャグをくり出してくるのである。もう、ごめんなさい。ぼくには無理です。この世界を受け入れる寛容さは持ち合わせておりません。どうかこの文章を最後まで読んだみなさん、とても遺憾なことですが、本書は強くオススメできる本ではありませんでした。でももしかしたら、これを読んで逆に興味を惹かれた人がいたりなんかして。