このあいだ紹介したバクスターの初長編である。
構成が秀逸で、章を追うごとに時間が逆行していくのである。このことによって、どういう効果が得られるか?
読み手は、先に結果を知らされるのである。そして、読み進めるにしたがって事の次第を理解するというわけだ。軽くミステリの叙述形式になっているというわけである。
語られる事柄はとりたてて事件が起こるわけでもなく、普通のアメリカ家族の日常を描いている。
しかし、そこはバクスター、彼の言葉選びの正確さ描写の確かさには思わずうなってしまう。宇宙物理学者となった天才肌のドルシーと唯一の肉親である自動車販売会社のヒュー。彼ら二人を主軸に物語はドルシーの生まれた日まで逆行し完結する。
おおきな感動を得ることはないが、実に滋味にあふれた小説だ。各章それぞれ独立した短編のような味わいがある。
とりもなおさず、他のバクスター作品も読みたい。強くそう願う。