なぜこの本が品切れなんだろう?一作もハズレなしのとてもお買い得短編集なのに。
本書を読んで、やっぱりラヴゼイはいいと確信した。彼のセンスのよさ、ユーモアそれにヒネリのきい
たストーリーなど、なにをおいても読者を楽しませようとする、その芸達者ぶりがうれしくなってしま
う短編集だ。
本書には16の短編がおさめられている。なかでも特に気に入ったのが、ラストの皮肉などんでん返し
があざやかな「あなたの殺人犯」。奇妙な味とツイストのきいた「処女と猛牛」。
話の展開が読めるのだが、正統派サスペンスでグイグイ読ませる「見つめている男」。ホームズ物にも
通じるテイストで論理的に解明される表題作「煙草屋の密室」などなどである。
しかし、その他の短編もすべて不満に思ったものがなかった。個人的な相性もよかったのかもしれない
が、一人の作家の短編集でこれだけ水準の高い本を、ぼくは他に知らない。ほんと、あざやかなお手並
みである。
第二短編集の「ミス・オイスター・ブラウンの犯罪」も読んだのだが、こちらの方はそれほどでもなか
った。「シヴァーズ嬢の招待状」が、ジャック・フィニィ風の作品で印象に残ったくらいだった。
そこで、最初の問いに返ってくるのである。
どうして、本書が品切れなんだろう?