読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ピーター・ラヴゼイ「煙草屋の密室」

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なぜこの本が品切れなんだろう?一作もハズレなしのとてもお買い得短編集なのに。

本書を読んで、やっぱりラヴゼイはいいと確信した。彼のセンスのよさ、ユーモアそれにヒネリのきい

たストーリーなど、なにをおいても読者を楽しませようとする、その芸達者ぶりがうれしくなってしま

う短編集だ。

本書には16の短編がおさめられている。なかでも特に気に入ったのが、ラストの皮肉などんでん返し

があざやかな「あなたの殺人犯」。奇妙な味とツイストのきいた「処女と猛牛」。

話の展開が読めるのだが、正統派サスペンスでグイグイ読ませる「見つめている男」。ホームズ物にも

通じるテイストで論理的に解明される表題作「煙草屋の密室」などなどである。

しかし、その他の短編もすべて不満に思ったものがなかった。個人的な相性もよかったのかもしれない

が、一人の作家の短編集でこれだけ水準の高い本を、ぼくは他に知らない。ほんと、あざやかなお手並

みである。

第二短編集の「ミス・オイスター・ブラウンの犯罪」も読んだのだが、こちらの方はそれほどでもなか

った。「シヴァーズ嬢の招待状」が、ジャック・フィニィ風の作品で印象に残ったくらいだった。

そこで、最初の問いに返ってくるのである。

どうして、本書が品切れなんだろう?