読書の愉楽

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ジョージ・R・R・マーティン「ナイトフライヤー」

 

ナイトフライヤー (ハヤカワ文庫SF)

ナイトフライヤー (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 

 ここに収録されている六編の中、短編はみなかなり以前に書かれたものなのである。タイトルは以下のとおり。

 「ナイトフライヤー

 「オーバーライド」

 「ウィークエンドは戦場で」

 「七たび戒めん、人を殺めるなかれと」

 「スター・リングの彩炎をもってしても」

 「この歌を、ライアに」

 最初と最後の作品だけ、100ページを超える中編である。どれが、どうというわけでもない。とりたてて抜きんでた作品があるわけでもなく、とんでもない駄作があるわけでもない。最初から最後まで読み通すことができたので、普通に面白かった。それまでの作品群なのであります。ドラマ化された表題作も、SFホラーなんていわれているが、ぼく的にはまったくそんな気配は感じなかった。宇宙船という密室で繰り広げられるちょっとイレギュラーなサスペンス物ってところかな。

 ラストの「この歌を、ライアに」ももっと異世界を堪能させてもらえるのかと思っていたが、オーソドックスに物語が進行し、さほどのサプライズもなく終了してしまった。宗教絡みは料理次第で辛気臭くなっちゃうんだよね。物語の核心の受け止め方なんだろうけど、ぼくの胸には響かなかった。

 転じて短めの作品は、短いがゆえに骨格がはっきりしていて、物語に入り込むスピードがはやいからわかりやすい。「オーバーライド」も「ウィークエンドは戦場で」も明確な世界観がすぐさま確率されて読みやすい。「七たび戒めん、人を殺めるなかれと」は、少々異質。ショッキングな場面から幕を開けるこの作品は、あのゲーム・オブ・スローンの世界観とどことなくダブる。こちらも宗教が反映されているが、こちらのほうが単純明快。映像化すればかなりのインパクトだと思う。映像化という点では「スター・リングの彩炎をもってしても」もかなり壮大なイメージに心震える作品だ。これを大胆に映像化してくれる人はいないだろうか?ぜひとも観てみたい。

 というわけで、これぞ!っていう作品はなかったんだけど、そこそこ楽しめたかな?