読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

クリスチアナ・ブランド「緑は危険」

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奇抜な設定などはなく、いかにもオーソドックスな殺人を扱っていながら、動機の謎と誰が殺ったかでこ

れほどグイグイ引っぱっていくミステリーをぼくは知りません。

誰もがそれらしい過去をもっていながら、誰が犯人なのか最後の最後までわからないんです。

ラストのどんでん返しは、強烈なのが二発カウンターで入ってきます。

黄金期の巨匠たちの雰囲気をそのままに、思いもよらぬユーモアと茶目っ気、それとゾッとするような残

酷さを巧みにブレンドして、極上のミステリーが作り上げられています。

ちなみにこの作品、宮脇孝雄氏曰く

「最初にこれを読むと、あとは何を読んでも物足りなく見えるので、注意を要する。あまりにも複雑なた

め、一年くらいたつとストーリーを忘れてしまい、時間をおいて何度でも楽しめるという、お買い得のミ

ステリーでもある」だそうです(笑)。

ぼくが本書を読んだのは十年前。ほんとストーリーや犯人はスッポリ抜け落ちてます(笑)。

かといって、内容が入り組んでてわかりにくいってわけじゃない。

ロジックの構築が精緻で、時間がたつと忘れてしまうんでしょうね。

ぼくももう一回読んでも、またあの興奮を味わえそうです。クリスティの「そして誰もいなくなった」や

クイーンの「Yの悲劇」やカーの「火刑法廷」なんかは本書より前に読んだにも関わらず、結構憶えてる

んですけどね。