読書の愉楽

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王谷昌「どうせカラダが目当てでしょ」

 

どうせカラダが目当てでしょ

どうせカラダが目当てでしょ

 

 

 

 差別するつもりはないが、やはり女性というものは多くの目に晒され、ほぼ例外なく一般化された観念の呪縛にとらわれる存在なのだと思う。男のぼくがいうのも変だが、女性は男と比べて何かと煩わしい日々のルーティンがあり、それだけでもかなり大変だと思うのである。

世間の目、ハラスメントを含んだ男の目、過去から連綿と続く因習や固定観念、そういった意味のないストレスを抱えて彼女たちは生きている。いや、そりゃ男もストレスはいっぱしあるけどね。この著者は「完璧じゃない、あたしたち」という女性同士の関係を様々なシチュエーションで切りとった作品集で知ったのだが、その健筆は本書のようなエッセイでも全開、いやむしろ本書のほうが本音をストレートに出せる分、文章がノリにのって痛快だ。

何回も言っちゃうが、男のぼくがいうのも変だがホントこの本読んで気持ちが楽になる女性がどれだけいることか。そして、本書を読んで身につまされる男がどれだけいることか。たとえ口に出さずともその目線や態度でどれだけ多くの女性に不快な思いをさせてきたことか。たいして気にもとめていない軽い冗談で、どれだけ多くの女性を傷つけてきたことか。

いささか煽情的なタイトルとこの表紙でエロ関係の内容なのかと誤解してしまうが、内容は女性としての気概を鼓舞するもので、なにかにつけて否定的にとらえがちになってしまう女性たちに自分を肯定していいんだと後押ししてくれる内容になっている。短絡的に物事を片付けてしまう世の男たちにも是非読んでほしい。女性として世間に晒されることがどれだけ大変なことなのかがよくわかる。それは想像以上のストレスなのだ。ぼくも、自分を戒めた。軽々しく放っていた冗談がどれだけ彼女たちを苦しめていたのか、よくわかったから。あと、女性に対する幻想は捨てなければいけませんよ。男は女性を美化しすぎ。同じ人間なんだから、基本男女の区別なく生理現象は平等なわけで、そこに大きな違いはないのである。

だから、本書は男女の区別なく世のすべての人たちが等しく読むべき本なのだ。さあ、秘めたるおもいに押しつぶされそうになっている彼女、そして誤解と不理解を上塗りして鎧にしちゃってる彼、みんなみんな本書を紐解きなされい!