本書の中には、生きて、苦悩して、プレッシャーに打ち克とうとする生身のレオナルドがいます。
レオナルド・ダ・ヴィンチは様々な本で描かれていますが、本書のレオナルドはその中でも、飛びぬけて精彩を放っています。
そして、こちらが主人公なのですが、レオナルドにひろわれて彼の徒弟となる少年サライ。
彼とレオナルドとの関係は、単なる師弟の枠におさまらない深い信頼と愛情で結ばれています。
年の離れた二人が、お互い干渉しあい影響されていく様子が作者の信念としてこちらにも充分伝わってきます。ただのこそ泥に過ぎなかったサライ。彼の奔放な性格、偉大な芸術や、権力にも臆さない野卑めいた態度は、レオナルドにとってなくてはならない存在となります。天才レオナルドが、名声や虚栄心に押しつぶされて力が入りすぎ芸術家としての飛翔を遂げられずにいる時、サライの存在がカンフルとしての役割を果たすのです。
もう一人、重要な役割を果たすのがベアトリチェ。美人に生まれつかなかった負い目をはね返し、芸術に対する深奥な理解力を持ったこのお姫様は、サライとレオナルドにも多大な影響をおよぼします。
本書に描かれている『モナリザ』の真実は、これはこれでとても説得力がある。レオナルドとサライそしてベアトリチェの心の動きを丹念に描いてあるからこその説得力なのでしょう。
本書もYAなんですが、大人の鑑賞に十分たえる作品になっています。
というか、そこらへんの小説より数段すばらしい。
オススメですね。