読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

道尾秀介「鬼の跫音」

この人は以前「シャドウ」を読んでミステリとしての技巧は良かったが、話の要となるある事実に違和感をおぼえてあまり評価しなかったのである。いってみればそれは言い掛かりのようなもので、気になったとしてもスルーしてしまえば別段不都合があるわけでも…

ダン・ブラウン「天使と悪魔」、「ダ・ヴィンチ・コード」

「天使と悪魔」の映画がこんど公開されるということで、それならばと、このラングドン教授のシリーズも紹介しておこうかなと思った次第。このシリーズのことを知ったのは、おそらくみなさんと同じ2004年の春の頃だった。このとき鳴り物入りで出版された…

彼我の境

グッコーの右上には、さなぎ谷。 ゆわえ岩にキランバ亭と見物が続く。ぼくは忙しく左右を見ながら、気もそぞろ。 昨日は諦観滝でうなだれて、牛毒の混じった雨に打たれて夜は寝込んだ。 やいのやいのと袖をひっぱるのは、まだ目も見えない小鬼たち。大きく開…

皆川博子「祝婚歌」

三ヶ月ほど皆川作品から遠のいてしまっていたので、これまた、もねさんから頂いた皆川コレクションの一冊をありがたく読ませていただいた。 これは、ほんとうに貴重な本なのである。だって、ネットで探しても見当たらないんだもの。ほんと、もねさんありがと…

一肇 「幽式」

たまたま本屋で見かけて手に取ったのが運のつき、久々にラノベを読むことになってしまった。 本書が扱うのは、タイトルからもわかるとおり霊の世界なのである。しかし、生粋のホラー小説じゃない ってとこがミソ。ただ、やはり扱っているテーマがテーマだけ…

柴田元幸編「昨日のように遠い日」

副題に『少女少年小説選』とあるが、読んでみた限りジュヴナイル小説選というスタンスではなくて、少女や少年が登場する小説のアンソロジーという感じで、おおまかにいって、大人の読み物となっている。 なお、収録されているのは13編。 ・「大洋」 バリー…

湊かなえ「少女」

これはちょっと期待はずれだった。前回の「告白」でいままでにないブラックな手応えを感じさせてくれた作者だったが、この二作目は少し要領を得ない印象を与えてしまう。内容は、簡単に済ますと二人の女子高生が、人の死というものに興味を持って、それぞれ…

山田正紀「神君幻法帖」

この佐伯俊男の魅力溢れる表紙と、山風忍法帖を想起させる魅惑的なタイトルにすっかりヤラれてしまい思わず読んでしまった。著者が山田正紀というのが少し不安要素だったのだが、圧倒的な懐かしさと興奮には抗しきれなかったのだ。だが読んでみればわかるが…

「五右衛門忍法帖」

山田風太郎の霊がぼくに乗り移る。 まるで自動筆記のように新しい忍法帖がぼくの持つペンから生まれる。ぼくはそれを書きながら、同時に読んで歓喜に震える。数ある忍法帖の中でこの作品が最高傑作になるのは間違いないと確信する。 それを自分で書いている…

伊藤計劃「ハーモニー」

しら菊さんから聞いて初めて知ったのだが伊藤さん3月20日に逝去されていたのである。享年34歳ということで、死ぬのに歳なんて関係ないのだが、ぼくより若いこんなに才能豊かな人がこの世を去ってしまうなんてちょっとショックだった。「虐殺器官」と本…

古本購入記 2009年3月度

今年三度目の古本購入記である。では早速書き出してみよう。 「おやすみ、こわい夢を見ないように」 角田光代 「トリップ」 〃 「夏の葬列」 山川方夫 「老妓抄」 岡本かの子 「思いわずらうことなく愉しく生きよ」 江國香織 「蛇神様」 高木彬光 「マゼンタ…