読書の愉楽

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湊かなえ「少女」

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 これはちょっと期待はずれだった。前回の「告白」でいままでにないブラックな手応えを感じさせてくれた作者だったが、この二作目は少し要領を得ない印象を与えてしまう。内容は、簡単に済ますと二人の女子高生が、人の死というものに興味を持って、それぞれ老人ホームと病院に通って人が死ぬ瞬間を目撃しようとする話。相変わらず物語の転がし方はうまくスイスイ読ませてくれるのだが、まず鼻白んでしまうのがその因果関係。ミステリ的な趣向として、物語のところどころに出てくるエピソードに伏線が張られているのだが、それを回収してみれば登場してくる様々な人物たちが皆、円を描くように繋がっているのが気に入らない。非常に安易な印象を与える。

 また、主人公である二人の女子高生の描かれ方に一貫性がなく、バラつきがあった。特に複雑な家庭環境にある由紀は、ボランティアでお話の読み聞かせに行った病院で難病と闘う二人の少年に出会ってから、まるっきり別人になったかの印象を受けてしまった。はっきりいって、皆、表情が思い浮かばないのだ。

 背景が薄っぺらいのか、言動にバラつきがあるからか、どうもこの話に出てくる人物たちは皆一様にのっぺらぼうの印象を受ける。

 と辛辣に書いてしまったが、まだまだこの人は見限ろうとは思っていない。

 今度こそほんとうに凄い作品を書いてくれるかもしれないと、少し期待している。

 だから、たぶん次を読んで今回と同じような感想だったら、もうこの人の本は読まないだろう。願わくばもっともっと分量の多い本を出して欲しい。だって、この本なんか字が大きすぎて飛ぶようにページがすぎていってしまったんだもの。これじゃ、あまりにも呆気ないじゃない?