読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ダン・ブラウン「天使と悪魔」、「ダ・ヴィンチ・コード」

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 「天使と悪魔」の映画がこんど公開されるということで、それならばと、このラングドン教授のシリーズも紹介しておこうかなと思った次第。このシリーズのことを知ったのは、おそらくみなさんと同じ2004年の春の頃だった。このとき鳴り物入りで出版されたのが、ラングドン教授シリーズの第二弾「ダ・ヴィンチ・コード」だった。その前年に刊行された「天使と悪魔」は存在は知っていたが、初紹介の作家ということもあり、タイトルやチラっと読んだ内容紹介からどうせたいしたことない作品なんだろうと勝手にイロモノ扱いしていたのである。

 

 だが、「ダ・ヴィンチ・コード」の紹介はいやが上にも期待を煽られた。だからすぐさま買って読んでみたのだが、これがめっぽうおもしろい。確かに、物語に深みがなく薄っぺらい印象を受けるし、登場するキャラクターがみな典型的なタイプ割りで処理されており、抜きん出た魅力に乏しいという難点はあるのだが、なんといってもクイクイ読ませるページターナーぶりは只事ではなく、アッという間に読了してしまったのだ。

 

 聖杯、テンプル騎士団、キリストの謎と魅惑的なキーワードがどんどん出てきて、定説をことごとく覆してゆく快感はたまらなかった。西洋の絵画、建築に秘められた象徴の意味、現在使われている言葉の思いもよらぬ語源、なんでもない習慣の由来。歴史が積み重ねてきた暗部にダン・ブラウンは驚くべき照明をあてるのである。この本を読んでいると、本当にどこまでがフィクションなんだと思ってしまうほどその筆勢は信憑性を高めているのだ。実際、この本に出てくる芸術作品、建築物、文書、秘密儀式は事実であり、物語の要である『シオン修道会』や『オプス・デイ』も実在するというのだから驚いてしまう。だから本書を読んだ当時は、このダン・ブラウンという人が第二のラシュディみたいになってしまったらどうしようかと思ったくらいなのだ。

 

 冗談はさておき、これで味を占めたぼくはすぐさま前作である「天使と悪魔」を読んだ。そして、これがまたすこぶるおもしろかったのだ。謎の質は「ダ・ヴィンチ・コード」のほうが上だったが、物語の質はこちらの方が上だなと思った。相変わらずのページターナーぶりで、この人の特徴である短い章割りでスルスル読めてしまうのである。ここで描かれるのは宗教と科学の確執だ。片やカトリックの総本山であるヴァチカン市国、対するは古来より連綿と生き続ける秘密組織イルミナティ。これぞまさしく手に汗握る展開、読んでいる間は血が沸騰するんじゃないかってくらい興奮した。

 

 また、この本を読んで堪能したのが舞台となるローマ市内やヴァチカン市国の描写である。死ぬまでに一度でいいから訪れたいと思った。

 

 だが、褒めてばかりもいられない。二冊続けてこのシリーズを読んで、どちらも物語の構成や登場人物の特徴などに類似点が散見され、そういった意味ではちょっと興を削がれるかなと思うのである。

 

 それでも、やはりこのシリーズはおもしろかった。第三作を執筆中だということだったので楽しみにしていたのだが、もう5年もたつのになんの音沙汰もないってことは、まだ書き上げてないのかな?amazonで検索してみたら「Solomon Key 」ってのが2018年に刊行予定となっていたが、これのことだろうか?