読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ジョン・スラデック「蒸気駆動の少年」

スラデックは、ぼくの中ではトム・リーミイと並んでアメリカSF界の二大奇人という位置づけになっているのだが、今回この短編集を読んでやはりこの見解は間違ってなかったと納得した。 この人の作品は、単なるアイディア・ストーリーの範疇に収まらない独特…

山田風太郎「明治バベルの塔 万朝報暗号戦」

本書には4編の明治物が収録されている。 ◆「明治バベルの塔」 ◇「牢屋の坊っちゃん」 ◆「いろは大王の火葬場」 ◇「四分割秋水伝」 なかでも一番おもしろかったのが「いろは大王の火葬場」である。これは、明治の世に『牛肉店のいろは』として二十数店舗を展…

思い出の曲

最近、よく思い出す歌がある。 みなさんは、20年ほど前にユーミンのバックアップでデビューした麗美という歌手のことをご存知だろ うか?とりたててファンだったわけでもないし、ユーミンが大好きというわけでもないのに、どういうわ けかこの麗美の「霧雨…

コイティーヴ

天井から落ちてきた顔は、大きな口の中でなにかをバリバリ噛み砕いていた。 夢ゆえ、決して驚かないぼくは平然とその様子を眺めていたが、なにを食べているのかが非常に気になっ て訊ねてみた。すると大顔は、口をモゴモゴさせながら 「これは、コイティーヴ…

乙一「ZOO1、2」

いまさらながらなのだが読んでみた。刊行当時、結構話題になった本だ。これの前に出てた「GOTH」も未読だし、これ以降に出た本も「銃とチョコレート」しか読んでないし、デビュー作含めたら本書で三作品ということになる。 本書には単行本未収録作品を含…

曽野綾子「消えない航跡」

念願の曽野綾子ミステリー短編集を手に入れ、めでたく読了した。書かれた時代が時代なので、やはり風俗や金銭感覚などに大きな隔たりを感じてしまうが、それはそれでご愛嬌というところか。 ミステリ集ということだが、本来の意味でのミステリとしての興趣は…

景山民夫「ハイランド幻想」

以前、このブログで「遠い海から来たCOO」を紹介したことがあったが、本書にはその前日譚ともいえる短篇「アイランド」が収録されている。これといって特別な趣向もない作品なのだが、あの名作のファンとしては、また小畑父子に会えただけでも、うれしい…

「田舎のパン屋にこそ、おいしいパンがある」

何気なく、思いつきで書いてる最上段の一言メッセージ。深い意味はないのだが、でも嘘八百でもない。 以前は警句みたいなことを書いたこともあったが、最近はあまり気張らずありのままあったこと見たこと 思ったことなどを書いている。 そんな一言メッセージ…

フィリップ・K・ディック「ユービック」

いままで本書をいれて5冊ディックの本を読んできたが、本書は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」や「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」と並んで、リーダビリティとエンターテイメント的要素を兼ねそなえた傑作だった。ミステリタッチですすめられ…

古本購入記 2008年3月度

うちの近所にある神社の桜も九分咲きで、ライトアップされた雄姿の凛々しく華やかなこと。 若い頃は桜の季節といっても鼻にもかけない自分でしたが、この歳になるとやはり花に季節を感じて眺め るたびに意味もなく心浮き立つ今日この頃であります。 でも、今…