読書の愉楽

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景山民夫「ハイランド幻想」

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 以前、このブログで「遠い海から来たCOO」を紹介したことがあったが、本書にはその前日譚ともいえる短篇「アイランド」が収録されている。これといって特別な趣向もない作品なのだが、あの名作のファンとしては、また小畑父子に会えただけでも、うれしいものである。遠い記憶が刺激されて、なんだか懐かしく幸せな気分になった。

 他の作品の中では、景山民夫の人生において4回偶然に遭遇したことのあるジャイアント馬場について語った「私説ジャイアント馬場伝」がなんとなく良かった。何が良いといって、街中に登場するジャイアント馬場の異様さが際立っていておもしろい。ぼくも、こういう体験したかった。

 「地獄」と「誰かが見ている」は景山氏の宗教観というか、死後の世界観が如実に現れた作品。作品としては小品すぎて評価にも値しないものだが、これはこれで一端が窺がえるという意味で興味深かった。

 「ジャイアント殺人事件」は、まさかあのジャイアントじゃないよね?と思っていたら、その通りだったので完璧にノックアウトされてしまった。とんでもねえ作品だ。ほんとバカだねえ。

 表題作にもなっている「ハイランド幻想」は、質的にも量的にも本書の中では一番まともな作品。リストラされた男が子どもの頃に憧れていたネッシーをたずねてスコットランドまで旅する話なのだが、ちょっとキザな演出が鼻につくのを我慢すれば、なかなかいい作品だと思う。余韻もあるしね。

 というわけで、全体として小粒でバカバカしい話が多かった。期待ハズレでした。でも、表紙が影山徹なので、この文庫は手元に置いておきたかったから、ま、いいとするか^^。