読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

北村薫・宮部みゆき編「名短篇、ここにあり」

この二人のタッグでは、以前「謎のギャラリー」シリーズでなんとも歯痒い思いをしたことがある。どういうことかというと、北村薫が選出したそれぞれの短篇について二人で対談しているのだが、その悉くがなんともピント外れで共感できないものだったのだ。ど…

安東能明「強奪 箱根駅伝」

元々テレビでスポーツ中継を見る習慣がないので、箱根駅伝の存在は知ってても一体どんなことが行われているのかなんてまるで知らなかった。そりゃ駅伝がどういう競技なのかってことは知っているが、選手やそれをサポートする人達、またそれをテレビ中継する…

ディエゴ・マラーニ「通訳」

なかなかの怪作だ。物語の進行方向が奇妙な具合にねじれていくのがおもしろい。 物語の主人公はジュネーヴの国際機関で同時通訳をしているセクションの責任者であるフェリックス・ベラミー。彼の部下である一人の通訳が仕事に支障をきたすほど奇妙な行動に出…

アレッサンドロ・バリッコ「絹」

つい先日公開された映画「シルク SILK」の原作である。バリッコの本では「シティ CITY」が一番おもしろそうだと思うのだが、とにかく映画が公開されたので本書を読んでみた。こういうきっかけでもないと10年も本棚にしまいこまれたままの本は読む…

西部ペニス

テレビを観ていたら「西部ペニス」というお笑いコンビが出てきた。 よくこんなコンビ名つけたなと驚くが、妻も子供たちもまったく気にしてない様子。 ぼくだけが過剰に反応しているのはなんだか癪にさわるので、ぼくも気にしてない風を装う。 「西部ペニス」…

野村美月「文学少女と慟哭の巡礼者」

相変わらずうまい。基本、恋愛絡みのストーリー展開になってしまうのはラノベの王道ともいえるので仕 方ないのだが、それにしてもこの話の盛り上げ方はどうだ。三人も子どもがいる、いい歳こいたおっちゃ んが真剣に読み込んでしまうのだから、このシリーズ…

山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー

角川のこの『本格ミステリ・アンソロジー』のシリーズも今回の山口雅也で4冊目となった。北村薫、有栖川有栖、法月綸太郎と続けて読んできたわけだが、毎回毎回その作家独自の視点でマニアックな作品が収集されており、いつものことながらどうしても買う羽…

先輩刑事と後輩刑事

「これは殺人事件だね」 「はあ」 「はあって君!なんだその間の抜けた返事は!」 「いえ、でも警部これほんとに殺しですかね?」 「なんだ、これが殺人じゃないって言うのか君は」 「だって、普通の首吊り死体ですよ。どうしてこれが殺しなんですか?」 「…

カール=ヨーハン・ヴァルグレン「怪人エルキュールの数奇な愛の物語」

刊行された当初から気になっていたこのスウェーデン人作家の怪作である。いや怪作といってしまえば語弊があるかもしれない。なぜなら本書はタイトルが示すとおり『愛の物語』なのだから。 物語の舞台は19世紀初頭のドイツ。ザックへニンにあるマダム・シャ…