「これは殺人事件だね」
「はあ」
「はあって君!なんだその間の抜けた返事は!」
「いえ、でも警部これほんとに殺しですかね?」
「なんだ、これが殺人じゃないって言うのか君は」
「だって、普通の首吊り死体ですよ。どうしてこれが殺しなんですか?」
「だから君はダメなんだ。よく見たまえ。この死体の首を」
「えっ?よく検分したんですが何か手がかりありました?」
「そんなこと言ってるから、君はいまだにヒラなんだよ」
「いやあ、わかりませんでした。警部教えてください。いったいどんな手がかりがあるんですか?」
「ロープが巻きついてる部分とズレて索条痕があるだろう。これが何を意味するかわからないのか君は」
「えーっと、首が絞まった時にズレたからこういうことになったんじゃないんですか?」
「違う、違う。首吊りをした場合こういうふうにズレることは絶対にないんだよ」
「え?そうなんですか?」
「君、警察学校で何を学んできたんだね?自殺死体と他殺死体の相違点という科目があっただろう」
「はい、その授業のときは叔母が亡くなったんで欠席しておりました」
「なんだ、それは!もっとマシな嘘つけんのかね」
「すいません、咄嗟のことで気のきいたことが浮かびませんでした」
「まあいい。君も覚えときなさい。首吊りをした場合、首に食込んだロープがズレることはない。なぜな
ら一回食込んだロープをズラそうとすれば死体を持ち上げないことにはズラすことは出来ないからだ」
「ああ、なるほど」
「だから、この痕は自殺の際についた痕ではない。よってこれは他者によってつけられた痕だということ
になる」
「ふ~む」
「おそらく犯人は首を絞めて殺した後、首吊り自殺したようにみせかけたんだ」
「はあ」
「なんだ!また間の抜けた返事しおって!」
「いえ、もう一つのパターンもアリかな、って思いまして」
「どういうことかね?」
「いや、首吊り自殺した死体を誰かが持ち上げて痕をズラしたとしたら・・・」
「なんだと!どうしてそんな無駄なことをする必要がある?」
「例えば死体を下ろさなくてはいけない理由があったとしたら・・・」
「だから、そんなことをする必要がどういう場合にあるというんだね」
「この死体の近親者が死体を清めるために一回下ろしたとすれば、どうでしょう?」
「なに?どうして一回下ろした死体をまたぶら下げるんだ?」
「それは変死体発見時の常として、現場保存が最優先ですし・・・」
「どうして素人がそんなことを気にかけるんだ?」
「いや、ほら、ミステリ小説なんかでそういう場面がよく出てくるでしょう?現場の物に触るな!って発
見者が言う場面」
「じゃあ、その近親者とやらも、その場面を思い出して現場保存しなくてはいけないと思い直し、また死
体を吊り下げたというのか?」
「はい」
「ふ~む。その線も無きにしも非ずだな。一応洗っておこう」
「はい、警部!」
※ 以上昨日みた夢の再現ですが、多少脚色した部分もあります。さて、ここで問題です。いったいぼく
はこの登場人物の誰になって夢に登場していたのでしょうか?そんなヒネった問題じゃないんで、答えを
知ってがっかりしないでください^^。