読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

西 加奈子「円卓」

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 ひさしぶりに、本読んで声だしてわろてもうたわ。これ、おもろいわ。最高やわ。小学三年て、こんなんやった?ほんまのこと言うて、自分のこと思い出してたけど、こんなエキセントリックな三年生ではなかったわ。なんせ出てくる人全部普通ちゃうもんな。

 

 まず驚いたんが、国際色豊かなその面子。ベトナム難民の息子で、自分のことを「儂(わし)」というゴックんことグウェン・ヴァン・ゴックン。期せずして場の空気をさらっと浄化してまうムードメーカーでクラスの人気者や。ロシアと日本のハーフで、九歳にして好色でハンサムな横山セルゲイ。女子とカーテンの陰にかくれてパンツを見せてもらうのが大好き。在日韓国人の四世で美少年の朴圭史。家も金持ちで、遊びに行くときれいなお母さんがいつも濃いカルピスいれてくれる。と、こんなにいろんな国の子が集まってるって凄いね、ほんま。

 

 主人公である『こっこ』こと渦原琴子も負けてへん。こっこは孤独や眼帯や病気や不幸にほのかな憧れを抱いて、ジャポニカの学習帳に自分の気になった言葉を強い筆圧のかなりきついゴシック体で書きつけて、それを宝物にしてる。こっこには幼馴染がおって、ぽっさんいう吃音の男の子やねんけど、この子はこっこの良心であって心の支え。ぽっさんは、七福神の寿老人が大好きで、いつか自分の前に現れて何かしらの贈り物を届けてくれるんちゃうかと半ば本気で信じてんねん。そう考えるに至ったエピソードがまた最高。このセンス大好き。

 

 とまあ、軽く紹介しただけでこんな感じなんやけど、その他こっこの家族もまたすばらしいキャラの人ばっかりで笑える話満載やし、ほんま薄い本ながら充分楽しませてくれんねん。

 

 でも、やっぱり瑕疵もあって、個人的には本書は物語としての完成度は低いと思うねん。当初のテンションがそのまま持続せんと途中で失速してまうし、展開の中でちょっと唐突に感じる部分があったりしてそこがぎこちない。こっこの成長物語としての側面を考えると少し無理があるし、子どもの目線からの世界のあり方や独特の価値観がうまく描けているかといえば、そんなことはない。

 

 それでも、本書はいとおしい。こっこがいとおしい。もう、可愛いてたまらん。毒のある無邪気さ、芯の通った考え、意固地でわがままで不器用でなんでも吸収しようとする貪欲さのすべてが愛おしい。だからけっしてパーフェクトではない本書が大好きや。薄うて、すぐ読めてまうけど、充分満足や。この本読んで、うちの子がさらに愛おしくなってもうた。もう、ほんまこの本最高や。