読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ジョー・ヒル「NOS4A2 ―ノスフェラトゥ―」

          イメージ 1イメージ 2



 まとまりのない感じなのだ。おおいに疑問なのだが、大きいくくりで本書は吸血鬼物になるのだろう。タイトルからして、そうだもの。しかし、その予備知識をもって本書を読みはじめると読者は大いにめんくらうことになる。本書に登場するチャールズ・マンクスは連続児童誘拐犯なのだが、実質かれは子どもを誘拐して切り刻んだり、血を吸ったりということはしない。かれは、自分が創造した『クリスマスランド』に子どもたちを永遠に閉じ込めようとする。そこは、ずっと雪が降り、クリスマスソングが流れ、様々なオーナメントに飾られた夢の国なのだ。主人公であるヴィクは、幼い頃マンクスに囚われ奇跡的にそこから逃げ出すことができたのだが、大人になってからもその体験がもとで重度のPTSDを患っている。彼女は彼女で特殊な能力をもっており、失せ物があるとそれを発見するための近道橋が現れ、瞬時にその場に行くことができるのだ。
           
 さて、以上のことからもわかるとおり本書はかなりファンタジー寄りのホラーだといえるだろう。この感触は前作の「ホーンズ 角」にもあったし、散漫な印象は前作も本作も同じだ。どうも、ジョー・ヒルという人は長編向きの作家ではないようだ。けっしておもしろくないわけではないし、途中で投げ出したりするような本でもないのだが、ラストまで読み通して結局最後は、で?って感じなのだ。

 

 いろんなエピソードが語られ、多くの登場人物が出てくるが、どれもが噛み合わない歯車のようで、しっくりこない。前半にはられた伏線が後半にいかされてくるということもないし、ラストに大きなカタストロフィがまっているということもない。結局、マンクスはどういう存在だったのか?という根本的な疑問もそのままだ。マンクスの最期にいたってはなんじゃそりゃ!と心の中でツッコミをいれてしまった。

 

 世間の評価がどうであれ、キングの作品の中で「呪われた町」はぼく的にはワースト3に入る作品だ。彼の唯一の吸血鬼物の長編だが、あれは退屈な作品だった。でも、この「NOS4A2」のほうがさらに評価は下がる。展開において前回にも見られた予測不能な部分は確かにあるが、全体をとおしてやはり本書は統一感がないのである。

 

 でも、これだけのことを書いておきながら、彼の新作が出たらまた読むのだろうけどね。