読書の愉楽

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飴村行「粘膜蜥蜴」

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これね、残念なことに話半ばで、まるっとするっとお見通しになってしまったのである。おそらくこういうオチになるんじゃないかなと予想してたらその通りになったので、逆に驚いてしまった。だから、ミステリ的興趣はあまり感じなかったのである。

話的には前回の「粘膜人間」の世界をそのまま踏襲した感じで、戦時下のパラレル日本を舞台にしており今回は『ヘルビノ』と呼ばれる頭部が蜥蜴の爬虫人が登場して、おもしろく話を攪乱してくれている。

そして、これまた前回と同じくして戦争に絡んだ拷問的な残虐場面が所狭しと散りばめられており、なかなか独創的な場面を描いているのも良いところ。

だが、第弐章での秘境冒険風に展開するくだりは、あのピーター・ジャクソン監督の「キング・コング」とあまりにも同一点が多いので驚いた。というか、あの部分は映画「キング・コング」のほうが数段出来が良いと思うのだがどうだろうか。

それともう一つ気になったのが、主人公の月ノ森雪麻呂の言動である。デフォルメされたキャラだということは重々承知しているのだが、いくらなんでもこの横暴さは好きになれなかった。

というわけで、これは前回のほうがまだ新鮮味があった分、そちらに軍配があがってしまうのである。この人がまったく違う話を書いたら、また読んでみようと思うが、おそらく「粘膜兄弟」はもう読まないでしょう。