読書の愉楽

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ジャック・カーリイ「百番目の男」

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 驚愕の真相だということで、多大なる期待を寄せて読んでみたのだが、なるほどこの真相には驚いた。

 前評判を踏まえた上での驚愕なので、これ、真っ白な状態で読んでいたらさぞかし驚いたことだろう。

 何がスゴイといって、こんなことを思いつく発想に感嘆してしまう。話自体は、もう生粋のサイコサスペンスで、構成から犯人像までいってみれば凡百の類似品とさほどの違いはない。逆にいえば、ゆえに安心して楽しめる出来となっている。

 だが、主人公であるカーソン・ライダー刑事のキャラクター造形と、憎めない黒人の相棒ハリー・ノーチラスの存在感、それとちょっと変わった鼻薬が効かせてあるおかげで読後の印象は特異なものとなっている。血腥く、狂気に彩られた犯罪が描かれているにも関わらず、爽やかな印象を受けるのもだからこそなのだろう。扱われる事件は、首切り連続殺人。そして、死体に刻まれた小さな文字。そこに隠された犯人の狂気とは何なのか?おそらく、この謎の真相を看破できる人は皆無だろう。それくらい飛びぬけていて独創的な真相だ。バカミスなどと言われているが、ぼくは褒め言葉としてバカミスと言わせてもらう。あまりにもバカバカしい真相なのだが、そこには突出した奇妙な論理があり笑い飛ばすことのできない不気味さが漂っているのだ。レクターもどきが出てきたのがちょっと興冷めだったにしても、その背景が主人公にも絡むものだったので、ま、良しとしよう。

 サイコ・サスペンスは久しぶりに読んだが、なかなか楽しめた。このシリーズは続けて読んでいこうと思う。