前評判を踏まえた上での驚愕なので、これ、真っ白な状態で読んでいたらさぞかし驚いたことだろう。
何がスゴイといって、こんなことを思いつく発想に感嘆してしまう。話自体は、もう生粋のサイコサスペ
ンスで、構成から犯人像までいってみれば凡百の類似品とさほどの違いはない。逆にいえば、ゆえに安心
して楽しめる出来となっている。
だが、主人公であるカーソン・ライダー刑事のキャラクター造形と、憎めない黒人の相棒ハリー・ノーチ
ラスの存在感、それとちょっと変わった鼻薬が効かせてあるおかげで読後の印象は特異なものとなってい
る。血腥く、狂気に彩られた犯罪が描かれているにも関わらず、爽やかな印象を受けるのもだからこそな
のだろう。扱われる事件は、首切り連続殺人。そして、死体に刻まれた小さな文字。そこに隠された犯人
の狂気とは何なのか?おそらく、この謎の真相を看破できる人は皆無だろう。それくらい飛びぬけていて
独創的な真相だ。バカミスなどと言われているが、ぼくは褒め言葉としてバカミスと言わせてもらう。あ
まりにもバカバカしい真相なのだが、そこには突出した奇妙な論理があり笑い飛ばすことのできない不気
味さが漂っているのだ。レクターもどきが出てきたのがちょっと興冷めだったにしても、その背景が主人
公にも絡むものだったので、ま、良しとしよう。
サイコ・サスペンスは久しぶりに読んだが、なかなか楽しめた。このシリーズは続けて読んでいこうと思
う。