読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

櫛木理宇「避雷針の夏」

 

 

避雷針の夏 (光文社文庫)

印象はよくない。閉鎖的環境、田舎特有の詮索クセ、旧弊な因習。本書を読めば、人と関わることの煩わしさがこれでもかという感じでわからせてくれる。しかし、それを楽しむほどにストーリーがおもしろくないから、始末が悪い。

 都会から、一念発起して再生を賭けやり直そうとこの地へやってきた男が主人公だ。しかし、家庭を顧みることをせず、田舎の風習にも無頓着な彼はどんどん転げ落ちていってしまう。しかし、それが例えば奥田英朗の「最悪」みたいなツボをついた展開になるならまだしも、大したエピソードがあるわけでもなく続いていくさまは、読んでいてまったくおもしろくない。

 おもしろくないにも関わらず、最後まで読み切ってしまった。この人は他にもいろんな作品を書いているので、本書のみの判断で見限ろうとは思わないが、いやぁ、本書はダメだった。暗黒小説?いやいや、そんな大層なもんじゃない。イヤミスでもない。うーん、これはハズレだったなぁ。