記事にはしてないのだが、この人は以前にデビュー作の「MISSING」を読んだことがあった。なかなかせつない雰囲気があって好印象だったのだが、それ以後この人の本を読むことはなかった。
今回べるさんの記事で興味を持って読んでみたのだが、なるほどこういうことなのね。生きる意味をなくしてしまったOLが自殺を決意するのだが、ある人物から一年だけ待てば、楽に死ぬ方法を褒美として差し上げますという申し出を受ける。こんな変な申し出もないものだが、死を決意するまでになると切羽詰った状況がそういう不届きな申し出も寛容に受け入れられるようにさせてしまうのかなと自分を納得させる。
で、物語はそれと並行して自殺を遂げたOLに興味を抱く雑誌記者の死の真相を探る過程が描かれる。
彼が興味を持ったのは、OLと同時期に他に二人の著名人も自殺していた偶然。三人とも服毒自殺。特に二人の著名人に至っては、彼自身インタヴューをしたことがあるのだ。思い違いかもしれないが、この三件の自殺には関連がある。いったいそこにどんな真相が隠されているのか?
本書は構成のうまさで読ませる。自殺を決意した女性の『その日まで』の一年と、事件の真相を追う記者のパートが交互に配され、これから起こる事とすでに起こってしまった事がリンクする点がゴールとして浮上するという構成なのだ。これは月並みといえばこれほど月並みな構成もないのだが、だが、だからこそシンプルで、物語を追うスピードが衰えることはない。ゆえに、どんどん読まされることになる。
本当のことをいうと、自殺した女性を描くということで、以前に読んだジェイ・アッシャーの「13の理由」という本が念頭にあった。だから本書の結末にちょっと物足りなさもあったのだ。やはりこうきたかと思ってしまった。べるさんも指摘されてたとおり本書の企みは早い段階でわかってしまった。だからラストはそういう風になるだろうなと予測はできた。でも、ほんとはもうひとひねりくらいあるかなと期待していたのだ。
ともあれ、久しぶりに読んだ本多作品、とてもおもしろかった。自殺というテーマを扱っているので、もしかしたら躊躇する向きもあるかもしれないが、本書は決してネガティヴな感情の溢れた本ではないので安心して読んで欲しい。逆にとても元気の出る本なのである。