もう最終巻が出てしまったこの文学少女シリーズ。これはいけないとあわてて本書を読んでみたのだが、
本作は時系列的には第二巻のあとの話となる。ここへきてどうして過去に戻るのか?ここで語られるのは
学園の女王である姫倉麻貴の血族の歴史である。いままで、お助けマン的な扱いしか受けてなかったこの
令嬢の陰の部分が語られ、尚且つ遠子と心葉の微妙な関係や、ずっと先のみんなの行く末なんかも垣間見
えたりして、最終話の前の静かな前哨戦としておおいに盛り上げてくれるのである。
そういった意味で、本書はこのタイミングで書かれるべくして書かれた本であり、ファンとしてはもうな
んでもいいから読ませてくれーという心境になっているはずだから、時系列が戻ろうが、いつものメンバ
ーが出て来なかろうが、そんなことはどうでもいいのである。
なんていってしまったら身も蓋もないのだが、それが実情なのではないだろうか。
今回はあの泉鏡花がとりあげられていた。それに加えてフーケーの「水妖記」もモチーフとして現れる。
フーケーは読んだことないのだが鏡花は「草迷宮」のみ読んだことがあって、かなり前のことなので細か
い内容は忘れてしまったが、何か柔らかいものを踏んだので、なんだろう?と見てみたらそれは女の乳房
で、口元から血を流してニタリと笑ったという場面のみ強烈に印象に残っている。ちょっと魘された。
だからぼくの鏡花のイメージは本書のイメージとはかけ離れており、若気のいたりでああいう読み方しか
出来なかったのかなと思ったりもしている。いま読めばまた違った印象になるのだろうか?確か「外科室
」も「高野聖」もあったと思うので、読んでみるのもいいかもしれない。
それにしても、やはり心葉の性格にはやきもきさせられる。というか、こんなに優柔不断な野郎はちょっ
といないのではないだろうか。まして、今回は贔屓にしているななせちゃんが出てこなかったので、少し
物足りなかった。内容的には、かなりビターでしたけどね^^。