読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

フレッド・ヴァルガス「論理は右手に」

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「本が好き!」の献本である。

 

 この人は、本書のシリーズ第一弾である「死者を起こせ」とゆきあやさんもそこそこの評価をしていた別シリーズの「青チョークの男」の二作邦訳が出ていて、概ね好評だったと記憶している。

 

 ぼくも「死者を起こせ」は読もうと思って購入してあったのだが、どうも昔からフランス産の文学を毛嫌いする傾向があるので、いままで読まずにきてしまった。

 

 なのに、今回献本でこの三聖人シリーズ第二弾がラインナップにあがっているのを見つけて、矢も盾もたまらず申し込んでしまったのは他でもない、その発端のあまりにも奇妙な謎に抗しがたい魅力を感じたからだった。

 

 だってあなた、犬のクソから人骨が出てきたんですよ。これほど奇妙な発端はないじゃありませんか。

 

 だからもう我慢できず、本来ならシリーズ第一弾から読まなければ気がすまない性格なのに、飛び越していきなり第二弾を読むという暴挙に出てしまったのだ。

 

 しかしフランス、されどフランス。やはりとっつきにくさが幅をきかせている。ていうか、これは訳がまずいのだろうか?何度も何度も行を戻って確認しなければならなかった。意味が微妙に外れていて、すんなり頭に入ってこないのだ。

 

 これには閉口したが、話自体はおもしろい展開をみせる。犬のクソから出てきた人骨の所在をめぐって、まだ見ぬ犯罪を探っていく逆探査は思わぬ真実を暴いていく。ここらへんの絞込み方は堂に入ったもので本格のテイストがあふれていて、楽しめる。

 

 また本書に登場する人々の奇人変人ぶりはなかなかのもので、これは読んでもらわなくてはわからないがやはりここらへんがフランスのテイストだなと思うのである。

 

 ま、読みにくさを別にすれば、かなり魅力的なシリーズだと思う。これに懲りずに第一弾の「死者を起こせ」も読んでみようと思わせる魅力はあった。

 

 本書は三聖人シリーズの第二弾と銘打たれているにも関わらず、主人公が元内務省調査員のルイ・ケルヴェレールだったので、三聖人の活躍が少なかった。その点、第一弾では三聖人がフルで活躍するみたいなので楽しみである。