「本が好き!」の献本である。
やっぱりフランス産には少し抵抗あるんだなぁ。本書の眼目である少々実験的ともいえる作者のたくらみは、日本でいえば筒井康隆あたりがやってるような試みなのだが、これがどうもしっくりこなかった。
物語の途中で挿入される著者自身の述懐はあまり目新しくないにしても、それとは別に登場人物自身が語り手となって著者と言い合いしたり、哲学的な考察に基づく思考過程が幅をきかせたりとだんだん節操なくなってくる。物語とは別に章のラストに別のストーリーが断続的に描かれたり、幕間が差し挟まれて一旦中断したりと様々な試みがなされているが、これがすべてにおいて心底から楽しめなかったのである。
これはいったいどうしたことか?フランス人と日本人の温度差が表出したのか?もしくはフランス人のユーモア感覚(この場合フランス風にエスプリといってもいい)が日本人のぼくに合わなかったのか?
とにかくこれが薄い本だったからなんとか読了したが、この調子で300ページ以上続いてたらおそらくギブアップしてたことだろう。
物語は一応ミステリの様相を呈している。金物屋連続襲撃事件が起こり、その犯人を追うというプロットにポルデヴィア公国の皇子失踪事件も絡み、そこに表題になっている美女オルタンス(登場場面ではパンティを履かずに登場)が出てきて、スケベな親父エウセビオスに高貴な猫アレクサンドル・ウラディミロヴィッチや大哲学者オルセル、名探偵ブロニャール警部などなどが登場し、あれやこれやと紆余曲折しながら物語は進んでゆくのである。
どうかお暇で、この書評を読んで万が一にも興味をもたれた方がおられたら、読んでみていただきたい。
薄い本なので、結構はやく読めると思います。あの若島先生も讃えておられますゆえ。