本書は、ここ何年かの中では出色の出来だと思う。
本書にはとびきり奇妙な謎が、これでもかというほど詰め込まれている。
とりわけスゴイのが、ネジ式ではずれる首の謎だ。
ネジ式?人間の首が?いったい、どゆこと?
誰もがそう思うことだろう。そして、そんなとんでもない謎が論理的に解決されるわけがないと思って
しまうだろう。こんなことが現実に起きるなんてことはありえない。
だが、これが理路整然と解決されるのだ。これには唸ってしまった。本書では完全にしてやられた。
今回は御手洗さん、北欧のウプサラ大学で脳に関する研究をしている。
御手洗は仲間の研究者からエゴン・マーカットという記憶の一部をなくした人物に引き合わせられる。
彼は『タンジール蜜柑共和国への帰還』という童話を書いていた。その物語の中では、蜜柑の樹の上に
ある村、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機などファンタジックな事柄が描かれてい
るのだが、御手洗はこの奇妙な物語が実際にエゴンが体験したことに基づいて書かれていると推理する
のである。
おいおい、こんな大風呂敷広げて大丈夫なんですか島田さん!とツッコミの一つもいれたくなってしまう
のだが、これがまことに納得のいく結末をむかえてしまうから素晴らしい。
ひとつ難を言えば、ノベルズ初の試みだと思われる横書きの部分が最初読みづらかったことだろうか。
しかし、それもこの奇妙な世界を構築する上での島田特有の『演出』なのだろう。
慣れれば横書きと縦書きの交差もストレスなく読めるようになる^^。
久しぶりに御手洗物で大いに溜飲を下げた作品だった。ほんと楽しめた。
もうそろそろこの本も文庫本になるのだろうが、はて、文庫になっても横書きは健在なのだろうか?
折原一の「遭難者」も文庫になったらどういう体裁になるのかと思っていたら、文庫なりに二分冊にな
っていたことだし、やっぱりこの本もこの体裁のまま文庫化されるのだろう。
これも楽しみだ。