ブログの仲間内(特に女性陣)では、かなり評判のよろしくないレオナが主人公のハードボイルド・ミステリーである。
おもしろかった。変な魅力があった。レオナが登場するのは「アトポス」以来ではないだろうか。
そして相変わらずの破天荒ぶりである。実際彼女の精神構造は計り知れない。そんな彼女の巻き込まれる今回の事件は、いつもながらの島田奇想ワールド満開だった。
発端は一本のスナッフ・フィルム。そこには女優パトリシア・クローガーが惨殺される模様が映っていた。しかも発見されたクローガ-の死体は切り裂かれ子宮と脊髄が奪われていた。このきわめて残忍な猟奇殺人に挑むのがクローガ-の親友であるレオナなのである。次は自分の番かも知れないという恐怖も抱えつつレオナは親友の敵討ちの意味もこめて、決然と真相解明にのりだす。
ケルト神話、クローン臓器などのキーワードが出てきて、猟奇色いっぱいのまさしく変態ワールド。
御手洗物にも比較しうる『極端でダイナミック』な謎がおもしろい。カタルシスを味わうまでもなかったが、真相解明では見事着地成功している。
なにより本書には、いい意味での無感動なおもしろさがある。雰囲気とでもいおうか。
本書と同年に「ロシア幽霊軍艦事件」という、こちらは正真正銘の御手洗物が刊行された。そちらの方もバカミスっぽいところがかなりおもしろくぼくは気に入ったのだが、それと比べたら本書の方が上だと思う。そして楽しみなのが、本書のラスト一行で予告される次回の事件である。本書刊行から三年も経っているので、もうそろそろ出てもいい頃だと思うのだが・・・。
御手洗もいいが、レオナもいい。ハードボイルドタッチで展開される物語は、なかなかサマになっていた。なんて言いながらも、本書の終盤で唐突に登場する御手洗の声には少し感動した。やはり御手洗が登場すると安心してしまうみたいだ^^。