本書は「シッピング・ニュース」で有名なアニー・ブルーの短編である。
映画公開にあわせて短編一本で文庫化しちゃってるのにまず驚くのだが、気になっていたアニー・プル
ーの作品を知るいい機会だと思って読んでみた。薄いから読むのに1時間もかからないのがいいじゃな
い^^。
アメリカ北西部ワイオミング州。若い二人のカウボーイが出会い衝動的に一線を越えてしまう。
物語は多くを語らない。むしろ読者にゆだねている。
行間に垣間見える荒ぶる情熱。しかし、この衝動的な関係はちょっと理解できない。というか抵抗があ
る。
よしんばあやまちでそういう関係を結んだとしても、その後の展開が納得できない。どうしてそこまで
愛を育めるのかが理解できない。
二人は、歳月を経て再び逢瀬を重ねるようになる。その時点で、二人はお互い伴侶を得、子供ももうけ
ている。こういうシチュエーションは理解できる。そういうのもアリだろうと思う。
しかし、どうして二人がそこまでなりふりかまわずお互いを激しく求め合うことができるのかがわから
ない。ただ単にそうなってしまったからといえばそれまでなのだが、心の軌跡を追う過程でその昂ぶり
がぼくの心に響いてこなかった。
だが、物語としては大変魅力的な結構を保っている作品だと思う。時代遅れとなってしまったカウボー
イの悲哀や、北西部の田舎のザラついた雰囲気、雄大な自然に包まれる開放感、そのすべてが実感をと
もなって迫ってくる。
小手調べとしては及第点というところだろうか。
映画の方では二人の心の揺れがもっと細かく描かれているらしい。
なお、この映画は本年度アカデミー賞最有力候補作となっているということである。