これを読んだのは、もう二十年近く前である。
この本を読む前に角川文庫から出てた「横溝正史読本」を読んだのだが、、横溝が「ドグラ・マグラ」を
読んで、夜中に発狂して発作的に首を吊りそうになり、奥方に止められたというエピソードがあって、正
直ちょっとビビっていた^^。
人を発狂させる本てどんな本なんだろうと、ビクビクしながら読んだのを憶えてる^^。
チャカポコ、チャカポコという音が頭の中に鳴り響いた数日間だった。
昔のことなので、細部は忘れてしまったのだが、それでも異様なイメージは結構残ってる。
人が死んで腐っていく過程を描写した巻物のくだりや、精神病院での大虐殺なんかが頭の片隅にこびり
ついちゃってる^^。
本書のキーワードは、精神と胎児の夢。これ一作で夢野久作は名を残しミステリー史上に暗黒小説の
金字塔を築きあげた。
この創元の日本探偵小説全集、他に短編「瓶詰の地獄」と中編「氷の涯」も収録されている。
「瓶詰の地獄」は、構成のトリックが光る佳品。漂流物なのだが、異様な熱気に包まれて息苦しくなっ
てくる。
「氷の涯」は正統派のスリラーで、予想外におもしろかった記憶がある。第一次世界大戦直後のロシア
で日本軍の若者がスパイと殺人の容疑をかけられ、ロシア中を彷徨う。
これが、結構読ませる。夢野久作の物語作家としての才能を十二分に味わえる傑作だった。
とにかく、ぼくは「ドグラ・マグラ」を読んで発狂はしなかった。
数日間がんじがらめにはされたのだが^^。