ずっと昔に「スーパーネイチャー」を挫折して以来、敬遠していたのだが、本書は短編形式だということなので、再挑戦してみた。
ワトソンの視点は、サイエンティストにはあるまじきロマンティストのそれであって、扱っている題材は『意識』、『偶然』、『利き手』などのごくありふれたものなのに、たった数十枚の中には驚くべき知識が詰まっていて、すこぶる刺激的だった。
彼はそれらの題材から、まったく常識を覆す新論考を導きだすのである。
ワトソンは、科学者が忌み嫌う『超自然的力』についても全面的に肯定し、またそれを読み手にも信じさせてしまう。
おそらく、『大いなる力』のようなものは存在するのだろう。
人類と類人猿を分けた力が存在したのだろう。
左利きより右利きが数多く生き残るような、何か『大いなる力』が存在したのだろう。
偶然が、起こるべくして起こるタイミングを調整する何かが存在するのだろう。
意識がつながる『場』が、どこかに存在するのだろう。
と、本書を読めばとんでもなく思われる事柄も、むべに否定できない気になってしまうのである。
いや、そう信じたい。