読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

マーク・スプラッグ「果てしなき日々」

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 丁度一年くらい前にでた本である。

 全体的には○。◎じゃない。

 月並みな展開といえば月並み。しかし、映画的に解釈すれば、これはなかなか印象に残る映画になりそう。

 作者があまりにも登場人物にたちに対してやさし過ぎるので、全体テーマとしての『許し』が強調されてないのが少し残念。会話が活きてないのもちょっと残念。

 アメリカのド田舎の自然と、そこで生活する真っ当な人たち。過去に縛られ、それを引きずる人たち。

 憎しみとそれを乗り越える大きな愛。

 起こった事柄の表面だけで判断しては早計だとわかっていても、ことそれが肉親にまつわる事だと、どうしてもそうなってしまう。

 罪を背負わす対象が、どうしても必要になってしまう。それがなければ、自分が乗り越えられない。

 『許す』という行為がいつ成されるのか。

 どうすれば『許す』ことが出来るのか。重いテーマであり、幾多の作品で描かれてきたこの一種の贖罪テーマが、本書では二人のキーマンによって微妙にボカされている。

 この二人が絡んでくることによって、一本の筋が分散されて『許し』の行為が薄れてしまう。

 じゃあ、『許し』を除外して接してみたらどうなんだろう?

 そうすると、映画的なクライマックスの残る作品になってしまう。

 ちょっとおもしろいでしょう?