この本で語られるベトナム戦争の体験談は、さほど目新しいものではありません。でもこれは児童書、戦
争から遠い場所で生活する現代の子供たちにとってはショッキングな内容だろうと思います。
なんて言ってるぼくにしたって戦争は体験してませんが、世代が移ってしまい体験した人たちの話を聞く
機会もない今の子供たちはさらに戦争から遠ざかっています。
この本で語られる話は、実体験者のみが伝えることのできる重みを持っています。
いまも世界のどこかで起こっている戦争。そんな現実と無縁な我々は、戦争の悲惨さ、残酷さ、そして悲
劇をとかく忘れがちです。そんないまの世代にとって戦争は違う世界で起こっている夢のまた夢の出来事
なんです。人が人を殺めて褒められる世界などあってはならない世界なのに、それが存在する恐怖。狂っ
た論理のまかりとおる戦争など、やはりあってはなりません。本書で語られる戦争の残酷さを知ってこ
そ、心の底から戦争を憎むことができるんだと思います。