過去に解決されている事件を自分の信念をもとに再調査するピップ。彼女は聡明で信念を曲げない女子高生。幼い頃に自分を守ってくれた優しいサルが容疑者のまま森で死体となって発見され、容疑者自殺として処理されたことが信じられないのだ。
彼女は、自由研究の課題としてこの事件を調べるのだが、そこには単純には解きほぐせないさまざまな思惑が絡みあっていたのである。
いま三部作の最終巻である「卒業生には向かない真実」が刊行され、なかなかざわついているこのシリーズ。続けて読んでやろう!ということで手をつけました。いやあ、噂に違わぬおもしろさ。けっこう分厚いんだけど(570ページほど)半分を過ぎたあたりからは、どどどーって感じで読んでしまいました。
でもね、さすが英国。女子高生が主人公だし、青春真っ盛りだし、スリルと恋とちょっぴり犯罪って感じでさわやかな読み応えなのかな?と思っていると、とんでもないうっちゃり喰らわされてしまいます。なにが辛いって、優しく接してくれていた知り合いが本当は裏の顔をもつ犯罪者だと気づかされることほど辛いことはないよね。っていうか、それはもはや恐怖なのだ。人間不信になっちゃう。
しかし、そのあまりにも恐ろしい真実を知ってもなお嫌な気持ちが抑えられているのは、ひとえに主人公であるピップの快活で聡明な正義を貫く姿勢にあるといっていい。彼女の相棒となってゆくサルの弟のラヴィとの関係や、事件の核心に否応なしに巻き込まれてゆく友人たちへの接し方、自身も傷つきながら、苦悩の中で再び立ち上がる姿など、もう好感しかないのである。
続いて「優等生は探偵に向かない」も読んでいきますよ。あっ、書き忘れるところだったけど、本書はピップの自由研究がベースになっているから、彼女の考察やメールでのやり取り、見つけた証拠の写真や事件の関係図なんてのが随所に取り入れられていて、なかなか楽しい緩急ついていてそれが臨場感を高めてくれていたと思う。こういう試みはいいよね。ま、とにかく本書は読んでよかったと思える本であることは間違いない。しばらくピップと御同行といきますか。