読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

中島かずき「髑髏城の七人」

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話題になっている『いのうえ歌舞伎』というものを一度観劇したいものだと思っているのだが、それもなかなかままならない。いまでは看板役者となった古田新太の怪物じみた演技をこの目で見てみたい。なんとも熱い登場人物たちの掛け合いをナマで感じたい。本書を読んでその欲求はさらにつのった。

本書を読んで意外だったのは、この物語が実際の史実をふまえた上で進行していく点だった。「髑髏城」なんておどろおどろしいネーミングと、いかにも伝奇っぽい雰囲気にこれはまったく別物のなんちゃって時代劇の類だと勝手に想像していたのだ。事実、開巻早々は「無界の里」なんていかがわしい色里が出てきて主要登場人物の何人かが、いかにもな大仰な謳い文句と共に紹介される。抱いて極楽惚れたら地獄の“極楽太夫”に関八州荒武者隊の頭目“抜かずの兵庫”などなど講談そのままの調子で話は進んでいくのである。う~む、これはいかにも伝奇な展開でござるなと満足しながら読んでいると、天正十年、本能寺の変なんてのが出てきてちょっと驚く。そうなの?これって史実の狭間の物語なの?なかなかやるじゃん、中島かずき

それからは怒涛の勢いで物語は進んでいく。さすがに重厚な質感が得られるような話ではないが、エンターテイメントとしては素晴らしい躍動感のある物語である。それぞれ特質を備えた登場人物の見せ場があり、強い敵と対峙する構図が最大限の盛り上がりをみせる。運命が巡り、必然に作用される登場人物たちがいるべき場所に配置されている快感と、それを裏切るようなひねった展開が血をたぎらせる。まことに楽しい時代劇だ。

また本書は時代劇が苦手な人でもスラスラ読めてしまう読み易さがある。ぜひ、挑戦してみて戴きたい。

スルッと、スラスラッとおもしろいよ。