読書の愉楽

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長岡弘樹「道具箱はささやく」

 

道具箱はささやく(祥伝社文庫)

 原稿用紙にして20枚。とても短い。その中でミステリとしてのサプライズを眼目とした作品を成立させる。そういう短篇が18収録されている。タイトルにもあるとおり、その中ではある種の道具がからむ仕様となっている。しかし、世間の評判はいいようだが、ぼくはあまり感心しなかった。やはり短いがゆえに小粒ちゃんなのだ。

 それはそれで成立しているから、とやかく言うことではない。これはぼく自身の好みの問題なのだ。こういう人間だから、ぼくはショート・ショートもあまり好まない。唯一ショート・ショートで感心したのは筒井康隆の「給水塔の幽霊」ぐらいか。

 閑話休題。本書は短編だ。ミステリとしての結構を保ち、道具という縛りを設け(しかし、これはあまり効果をあげていない気がする)成立させるという試みは、難度の高い作業だ。でも、それがなんとなくわかってしまう。伏線が割とあらかさまなものが多く、中には専門的な知識がないと解けないものもあるが、おおむね予想がついてしまう。

 この人は以前話題になった「教場」を読んだときも微妙だったんだよなー。合わないのかな。コンビニに寄ったとき、なんとなく興味引かれて買ってしまったのだが、あまり実のない感想になってしまった。