読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

相沢沙呼 「 medium 霊媒探偵城塚翡翠」

medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)

さすが、各ミステリーのベストで一位をとっただけのことはある。なかなか驚かせてくれますよ。
 
 遅まきながら、文庫化を機に読んでみたのだが、ほんと寝て読んでたら、思わす起き上がっちゃったってくらい面食らいました。

 本書は、短編形式で四話収録されていて、各話完結という形で進められていく。登場するのは、タイトルにもなっている霊媒探偵 城塚翡翠とその相棒役となる推理作家の香月史郎。この二人が主体となって、それぞれの謎を解いてゆく。そして、その合間に挿入されるシリアルキラーらしき男の独白。懸命でない読者であっても、このシリアルキラーがラスボスで登場するんだろうなと察しはつく。

 当初、すごいミステリなんだという期待で読みはじめたが、確かに霊媒によって犯人を知るというミステリにあるまじき行為にえ?となり、でもそれを成立させるために、後付けのロジックを組み立てるという試みが、なかなか新しいなと感じ、いってみれば変格の倒叙になるんだなと感心したけど、各話のロジック的には、なんかちょっと弱いかな?やっぱりこんなもんなのかな?て感じで、でも翡翠の萌えキャラがおじさん的には、DQNな感じでなになに翡翠ちゃん、かわええーのうと喜んでたけど、それもこれも、ねえ。ほんとに、ああた、凄いことになってるんでございます。
  
 いってみれば、本書の最終章は、あの「魔法少女まどか☆マギカ」の神回といわれる第10話の衝撃の再来だ。まさに天地がひっくり返る。どんでん返しの度合いが素晴らしい。キャラがどうのこうのとか、騙された感がどうのこうのとか、どうでもいい。ミステリとしての結構の美しさと、試みの斬新さでは、近年希にみる出来のミステリだとおもうのである。