読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

マット・ラフ「バッド・モンキーズ」

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 ちょっと読んだことのない感じがとても新鮮だった。あまり多くを語れない類の話であり、信用できない語り手の手法を用いて、なんとも見事に読者を翻弄してくれる。

 とりあえず、開巻早々からいわくありげな展開になってくるのだ。ホワイトルームで尋問を受ける女。どうやら殺人を犯したらしいが、精神科医が尋問しているということは、鑑定をしているということなのか?そうして語り出される女の告白はまさしく驚くべきもので、秘密組織に光線銃に数々のシリアルキラー達、ドラッグでトリップしたような世界で展開される物語はあまりにも奇妙でおもしろい。

 いったいどこまでが真実でどこまでが嘘なのか?相手に心筋梗塞脳梗塞を起こさせるNC銃とは?クロスワードパズルに隠されていたメッセージは?ありとあらゆる場所に仕掛けられている監視の目とは?

 あまりにもB級なテイストと斬新な試み、これが渾然一体となって読者にたたみかけてくる。饒舌な語りはあらゆる予測をはらみ、ラストの到達点に向かって驀進する。

 ミステリとしてのおもしろさにファンタジーやSF、さらにはコミックのはじけたポップさが加わり、独自の世界を創り上げていてあまりにも魅力的だ。

 この人の本をもっと読んでみたいと思った。チープだがセンスある世界観に脱帽だ。本作が第四作だそうなので、これ以前の本も是非読んでみたい。いやあ、好きだなぁこの感じ。

 本書の雰囲気を例えるのに以前に読んだ本を出してこようと思ったのだが、これがまた該当する本がないから始末に悪い。かといって、本書が飛びぬけて独創的な作品なのかというと、そうでもない。ぼく的にはタランティーノあたりが映画化してくれると、とても素敵な映画になるような気がするんだけど、どんなもんだろうか?