いまでは、菊池秀行も夢枕獏も読むことはありません。
卒業してしまったんでしょうね。
でもまだ本を読みはじめて間もない頃は、このお二人に大変お世話になりました。
中でも、今回紹介するこの「エイリアンシリーズ」は大好きでした。
ジュブナイル専門のソノラマ文庫から出てるんで、学生以外は手にとる人もいないかもしれませんが、
この「エイリアンシリーズ」は、ジュブナイルだけに読ませておくのはもったいないくらいおもしろいと
思います。この感覚は小野不由美の十二国記シリーズにも通じるものがあります。
特に、このシリーズの初期作品は、物語のおもしろさもさることながら、随所にホラーや伝奇の要素が盛
り込まれ、忘れがたい印象を残しています。
主人公は、八頭 大。高校生だけどトレジャー・ハンターで、それも世界でもトップクラスの技量です。
彼が、相棒のゆきちゃんと一緒に毎回騒動をくり広げるんですが、これがいつも世界レベルの規模に膨れ
上がるから痛快です。
扱われる謎も、地球上に存在しえない金属片や、失われた名ピアニストの手首や、キリストとユダ、ノア
の方舟等など、毎回趣向を凝らし読者をあきさせません。
さらに特筆すべきは、ときおり顔をのぞかせる濃厚なホラー色でしょう。
「エイリアン秘宝街」での飯田橋の怪夫婦の件、よだれ長者の件。
「エイリアン怪猫伝」は、シリーズ屈指の怖さで、全編がホラー色満載。
「エイリアン妖山記」での、山中の一軒家の件。これは、かの海難史上最大の謎といわれるマリー・セレ
スト号事件とそっくり同じ体験をさせてくれます。
いまだに、このシリーズはぼくを熱くさせてくれます。ジュブナイルだといって侮るなかれ。
このシリーズは、ほんとうにおもしろい。「エイリアン魔神国」の途中から離れていってしまったんで
すが、それまでの作品は、かなりハイレベルの完成度だったと思います。
ぼっちゃん、お嬢ちゃんから、お兄さんお姉さん、それにおじさんおばさんまでまで、みなさん、どうぞ
手に取ってみて下さい。
一読すれば「いまさら」なんて言葉は、絶対吐かないと思いますよ。