読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ダン・ファンテ「天使はポケットに何も持っていない」

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 どうしょうもない飲んだくれで、アルコールがきれると、自虐的で目も当てられない暴走はとどまることを知らない。

 ほんと主人公のブルーノは、ろくでなしなんです。

 でも、そんな彼をいつしか愛しく感じてる自分に気づいて驚きます。

 妻にも見放され、家族にもあきれられ、反目しつつもやはり敬愛している父の死に直面し、彼は父の忘れ形見のブルテリアと共にあてどない旅に出ます。

 しかし、かっこ悪い。

 臆面もなく人間をさらけ出すブルーノは、とてもかっこ悪い。自制がきかない分、素のままの欲望が表出して彼はどんどん惨めになっていくんです。

 でも、そこに嫌悪感はありません。どうしてだろう?読みながら考えました。そう!惨めで、自暴自棄で、どうしょうもないろくでなしなんだけど、彼には芯の部分でやさしさがある。その気持ちに救われて、こちらとしては彼から目が離せなくなってしまうんです。ブルーノと老犬ロッコの関係は、そんな彼の人間性をうまく表しています。老いて、臭くて、他の犬を見るとノドブエに喰らいついて離れないくらい凶暴で、クソを垂れ流すこのどうしょうもない犬を、彼はとても愛しげに扱います。ラストでの彼のロ
ッコに対する真摯な態度には、正直感動しました。