を知らない。
ほんと主人公のブルーノは、ろくでなしなんです。
でも、そんな彼をいつしか愛しく感じてる自分に気づいて驚きます。
妻にも見放され、家族にもあきれられ、反目しつつもやはり敬愛している父の死に直面し、彼は父の忘れ
形見のブルテリアと共にあてどない旅に出ます。
しかし、かっこ悪い。
臆面もなく人間をさらけ出すブルーノは、とてもかっこ悪い。自制がきかない分、素のままの欲望が表出
して彼はどんどん惨めになっていくんです。
でも、そこに嫌悪感はありません。どうしてだろう?読みながら考えました。そう!惨めで、自暴自棄
で、どうしょうもないろくでなしなんだけど、彼には芯の部分でやさしさがある。その気持ちに救われ
て、こちらとしては彼から目が離せなくなってしまうんです。ブルーノと老犬ロッコの関係は、そんな彼
の人間性をうまく表しています。老いて、臭くて、他の犬を見るとノドブエに喰らいついて離れないくら
い凶暴で、クソを垂れ流すこのどうしょうもない犬を、彼はとても愛しげに扱います。ラストでの彼のロ
ッコに対する真摯な態度には、正直感動しました。