読書の愉楽

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シオドア・スタージョン「影よ、影よ、影の国」

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 現在絶版のスタージョンの怪奇、幻想短編集であります。最近、再評価が高まっているスタージョンですが、本書におさめられている短編は、現在でもほとんど読むことができない状態です。どこかの出版社さん、是非復刊お願い致します。

 以下簡単に各作品について。


「影よ、影よ、影の国」
 継母に虐げられた男の子が、影の世界に空想し、やがて単純明快な結末をむかえる。継母と子とのやりとりが、悲惨であろう結末を爽快にしている。スタージョンの独壇場。

※この短編は河出奇想コレクションの1冊「不思議のひと触れ」に収録されています。


「秘密嫌いの霊体」
 愛する女性が、奇妙な研究の末他人の心の中の憎悪をポルターガイストとして憑依させてしまう能力を得たとしたら?まるでシチュエーションコメディーのような作品。気のきいた結末だ。


「金星の水晶」
 シェクリィが好んだ、『異性人とのファーストコンタクトにおける大いなる勘違い』のスタージョン版。ラストの一行が爽快。


「嫉妬深い幽霊」
 好きになった女性が嫉妬深い幽霊に付きまとわれている。この手も足も出ない幽霊を撃退する方法は?これも気持ちのいいハッピーエンドをむかえる。


「超能力の血」
 これは少々トリッキーな作品だ。二度読んでおいしい。でも、不思議な感じは残る。


「地球を継ぐもの」
 滅びをむかえる人類が、後継者として選んだ種は何か?賢い猿?犬?イルカ?いやいやそんなんじゃありません。それを知ればきっと笑っちゃうでしょう。でも、叡智を託そうとしたその種に人類はしっぺ返しをくらっちゃいます。


「死を語る骨」
 本作だけが共作だそうである。ジェームズ・ベアード。誰ですかね。不勉強で知りません。しかし、これもおもしろかった。ひょんなことから、骨の記憶を再生する機械を作ってしまったことから、人類史上初めて死を疑似体験してしまう人たちの顛末を描いている。誰も見たことがない世界。未知の領域。ブラックな笑いをさそいます。


 以上7作品すべておもしろい。スタージョンって、とっても甘い人だ。つくづくそう思いました。

 この短編集を埋もれさせとくのはもったいない。最近再評価の気運もたかまってるので、この機会に是非復刊を!