読書の愉楽

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シオドア・スタージョン「輝く断片」

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 河出の奇想コレクションで唯一2冊出てるのがスタージョンなのである。このシリーズ現在9冊刊行されていて、ぼくが読んだのはその内5冊。中にはどこがおもしろいのかよくわからなかった作品(アヴラム・デイヴィッドスン「どんがらがん」これはあの殊能将之が編纂している)などもあったが、総じて読んで損のないおもしろい選集だと思っている。そんなハイレベルな選集にあって2冊も紹介されているのだから、どれだけスタージョンが凄い作家かということがわかるというものだ。かのディレイニーも神と崇めるほどスタージョンを偏愛していたというが、まだ記憶に新しいスタージョンフィーバーで多くの作品に接したぼくも彼の作品が大好きである。

 

 スタージョン2回目の配本となる本書は、彼の短編の中でもミステリ色の濃い作品を集めてある。

 

 前回の「不思議のひと触れ」(記事はこちら→不思議のひと触れ)ほどの好感触ではなかったが本書もなかなか素晴らしかった。

 

 凄いのが表題作の「輝く断片」。これヘタすりゃサイコ物に分類されてしまいそうな作品だが、それがスタージョンの手にかかるとこんなにもズッシリと手応えのあるせつない物語になるとは。これほどの衝撃は、久しぶりだった。敗者の物語を書かせたら、スタージョンの右にでる者はいない。永遠に記憶に残る作品だ。「ルウェリンの犯罪」も、かなり凄まじい作品。ほんとラストまでは、緊迫感はあるがそれほど輝いてる作品だとは思わなかったのだが、結末にいたって驚くべき変貌を遂げてしまう。似た感触なのが「ニュースの時間です」。この作品も衝撃的な結末をむかえて秀逸。まさに、してやったりという作品だ。逆に「マエストロを殺せ」などは、いささか弱い。傑作と謳われているが、少し冗長に感じる。それでも、ラストは印象的だった。あと印象に残ったのが「ミドリザルとの情事」。これはスタージョンにしてはめずらしく『下ネタ』系だった^^。逆にそれがおもしろかった。

 

 というわけで、現代の目で見れば広義のミステリともいえる作品が多く収録されている本書は、「不思議のひと触れ」よりはキャッチーではないかもしれないが、なかなか読み応えのある短編集であるといえる。特に表題作は必読だ。

 

 尚、これは余談だがスタージョンとミステリといえばやはりエラリイ・クイーン「盤面の敵」に触れないわけにはいかないだろう。ダネイの詳細なプロットにもとづいてスタージョンが小説を書き、リーが全面的に手を入れて、さらにダネイが加筆して完成させたといわれるこの小説はなかなかの異色作らしい。

 

 『らしい』というのはぼくがまだ未読だからだが、この本『怖さ、不気味さ』という観点からもなかなかの秀作らしい。う~む、ほんとこの本読むのが楽しみだ。