読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

シオドア・スタージョン「きみの血を」

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あまりにも特殊な吸血鬼物ですね、これは。

まず構成から変わっていて、ラストの真相が明かされるところまで吸血鬼も登場しなければ、それらしい

場面も出てこない。事件を探る軍医と陸軍大佐との往復書簡や、渦中の人物による手記などが綴られてい

くのですが、とりたてて何も起こらないんです。

しかし、何かある。どこかおかしい。裏に何か大きなものが隠れている。真相がどうなのか早く知りた

い。しかし読ませますねえ。めっぽう読ませる。

そしてラストの1対1の診断場面。いやあ、こういう事だったのかあ。なんかスゴイよ、この小説。薄い

本で、大きな山場もなく、派手な装飾もない。しかし、なんだこの迫力は。すべての謎が氷解して、よう

やく見えてくる手記の真相。けっこうグロいことになってんじゃん。これ、生理的にうけつけない人も多

いんじゃないでしょうか。でも、それが生々しく描写されずに読者の想像に委ねてあるところが、この本

のミソなんですね。う~ん、ウマいなあスタージョン