読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2005-11-06から1日間の記事一覧

デヴィッド マドセン 「グノーシスの薔薇」

おもしろかったですね。充分堪能しました。確かにエログロ描写はテンコ盛りなんですが、それにもまして物語の魅力が素晴らしい。豊穣にして壮麗、荘厳にして蠱惑的な世界は小説のおもしろさをこれでもかとわからせてくれます。ルネッサンス期のローマは世界…

シオドア・スタージョン「きみの血を」

あまりにも特殊な吸血鬼物ですね、これは。 まず構成から変わっていて、ラストの真相が明かされるところまで吸血鬼も登場しなければ、それらしい 場面も出てこない。事件を探る軍医と陸軍大佐との往復書簡や、渦中の人物による手記などが綴られてい くのです…

ロバート・ウェストール「かかし」

本書は全編通して重苦しい雰囲気に包まれています。 主人公の少年サイモンは、思春期特有の難しい時期にあり、世のすべての事を否定的にとらえ、どうしょうもない衝動を内に秘めて不満にまみれています。彼の父親は先の戦争で戦死しており、まだ若くて美しい…

オードリー ニッフェネガー 「 タイムトラベラーズ・ワイフ 」

残酷な話だと思います。これほど痛みをともなうタイムトラベル物は、初めてです。 ロバート・F・ヤングの短編に「リトル・ドッグゴーン」という短編があるんですが、あれを読んだ時に感じた胸を衝く痛みと同じ感触です。ヤングの方はタイムトラベルじゃなく…