読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ドン・ウィンズロウ「ウォータースライドをのぼれ」

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  本書は、ストリートキッズだった主人公ニールが、父親代わりのグレアムに拾われ探偵として生きる術を学びながら成長していくという涙ちょちょぎれもんの傑作シリーズ第4弾です。

 シリーズを続けて読んできた読者にとっては、本書の展開はまことに楽しい。

 このシリーズ中もっとも軽妙な本書を読んでて、ぼくは映画「ミッドナイト・ラン」を思い出してしまいました。今回はストリートキッズ版「マイ・フェア・レディ」のお話。

 様々な思惑が絡まりあい、それぞれの登場人物がとる行動が有機的に作用しあうところなどあの映画の醍醐味そのまま。といっても、これは悪くいえば御都合主義。あまりにもうまく事が運びすぎてる。

 特に後半のベガスのホテルの件なんかね。冷静に考えればそうなのですが、しかし、ニールに惚れこんでるこのシリーズのファンにはそんなこと気にならない。ただただニールと、それを取り巻く仲間たちをハラハラしながら温かく見守るのみなのです。相変わらずニールは貧乏くじを引かされています。今回いつものへらず口が鳴りをひそめていて少しさみしかったのですが、いつものメンバーにまた出会えたことがうれしかった。ニールの将来についての明確な答えも出されたし大団円ではないでしょうか。

 次作でこのシリーズが終わってしまうのはまことにさみしい限りですが、はやく読みたいのも正直な気持ち。

 う~ん、やはりこのシリーズは楽しい。