本書はケルトの伝承や伝説をもとに描かれたゴシック・ホラー短編集。で、不思議だったのが現代を舞台
にしてて何故にゴシック・ホラーなのかってことだったんですが、読み進めていくにつれてその疑問は消
えさりました。
最初の数編はまさしく現代を舞台にしたものだったんですが、その後に続く短編では、過去のアイルラン
ドを舞台にしたもの、現代でありながら過去の出来事が主軸にすえられているもの等がありました。これ
らの短編は、まさしくゴシック・ホラー。霧深い幻想の国アイルランドの悲哀に満ちた歴史がくり返し語
られ、おぼろげにしか知らなかったゲール民族の歩んできた悲惨な過去が見事に再現されています。ホラ
ーとしても本書はなかなかの成果をあげています。特に背筋が寒かったのが「髪白きもの」。この作品は
怖い。ビジュアル的にも因縁的にもパーフェクトな作品でした。
というわけで、アイルランドの歴史を知る上でも最適の一冊であり、ホラーとしても最上の短編集であり
ました。