ぼくの独断と偏見で決めた感涙SFベスト3の二冊目です。
ロバート・F・ヤングの作品をひとつでも読めば、誰もが彼の虜となることでしょう。とにかく彼の作品は甘い。そしてひしひしとせつない。
本を読んでいて涙を流すことのなかったぼくが、はじめて涙したのが本書でした。
彼の本は現在では絶版が多く、本書は唯一手に入る短編集なのではないでしょうか。
今度河出書房新社の奇想コレクションシリーズで、「たんぽぽ娘」が出るらしいですが、今からほんと楽しみです。
ヤングは作品の中で、くり返し文明の発達に対する警告を発しています。何もかもが便利になっていき、ささやかな幸せや人との関わりの中で生まれる思いやりなどが希薄になっていくことへの警告とでもいいましょうか、世の中が発展すればするほど余裕がなくなっていき人間本来のやさしさが消えていくことの悲しさを強く訴えています。
まさしく現代で危惧されてる、世界をとりまく現象ではありませんか。
だから、彼の作品を読んでいるとノスタルジックな感動が得られるのではないでしょうか。もうひとつ、この本を読み終えたあと、人にやさしく接してる自分に誰もが気づくはずです。
それほどこの本は、ささくれた気持ちや不満をきれいに拭いさってくれるんです。