読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

「SF感涙本ベスト3』本学大学SF学部レポート

 少ないながらも細々とSF畑の作品を読んできたのだが、その中で三冊だけホロリと涙を流したごっつぅええ話というのがあった。ほんと偏った読書歴の上に今の自分があるのは重々承知の助、SFを読んでるといってもアシモフ、クラークの作品はいまだ一冊も読んでないし、バラードもゼラズニィディレイニーもヴァーリィも読んだことないのである。さらに付け加えるなら「ニューロマンサー」も「エンダーのゲーム」も「地球の長い午後」も「鼠と竜のゲーム」も読んでない。挫折した有名SF本は数知れず、ベイリー「カエアンの聖衣」もブリン「スタータイド・ライジング」もマキャフリィ「歌う船」もクレメント「重力の使命」もみんな途中でほっぽり出した。

 

 とまあ、こんな具合にぼくはSFの正しい読者ではないのだ。しかし、そういった偏ったSF歴の中にもやはり素晴らしい作品との出会いはあったわけで、今回紹介するのはその中でも涙ウルウルの感動作品なのである。

 

 そういった本は他にもいっぱいあるのだろうが、現時点ではこの三冊しか読んでないのでご容赦を。

 

 おそらくクラーク「幼年期の終り」、ブラッドベリ火星年代記」、レズニック「キリンヤガ」なども読めば感涙になりそうな予感はする。でも、今回は未読ゆえこれらの作品は却下。

 

 というわけで、今回紹介するのはホント定番中の定番なのである。

 

 それでは早速いってみよう。

 

第一位 ロバート・F・ヤング「ジョナサンと宇宙クジラ

 

イメージ 1イメージ 2

 

 ↑左が旧表紙、右がついこの間出た新装版

 

 こういった企画があれば絶対はずせないのがロバート・F・ヤングである。ぼくはこの短編集を読んで完全にノックアウトされてしまった。本を読んでいて涙を流すことのなかったぼくが、はじめて涙したのが本書だった。とにかく彼の作品は甘い。そしてひしひしとせつない。ヤングの作品をひとつでも読めば、誰もが彼の虜となることだろう。この短編集の中でなりふりかまわず泣いてしまったのが「リトル・ドッグ・ゴーン」である。これにはやられた。これは犬好きにはたまらない作品ではないだろうか。だって犬より猫派というぼくでさえ、涙でぐじゅぐじゅになってしまったのだから。心がささくれだっている人がいるなら、本書をお読みなさい。この本を読み終えたあと、人にやさしく接してる自分に誰もが気づくはずだ。それほどこの本は、ささくれた気持ちや不満をきれいに拭いさってくれるのである。



 

イメージ 3

 

 これは、普段SFを読まない人にもあまねく知れわたっている不朽の名作だ。これに関しては昨年記事にしたので興味のある方はそちらをご覧いただきたい。
 本書は深く心に響く。もし未読の方がおられるならば是非お読みいただきたい。本書を知らずに一生を終えるのはすごく悲しいことだと思う。



 

イメージ 4

 

 バリバリのSFでありながら、そこには躍動する人間がいた。まったく基本的な人間ドラマが描かれ決してハッピーエンドではない作品たちに、重層的な世界観を与え大きな感動を呼ぶ。この短編集は難解なSF用語も影を潜め、オーソドックスなスペースオペラとしてのSFを充分堪能できる内容となっている。だから、文系のSF嫌いの人でも難なく読むことができるティプトリー入門書としては最適の書である。どんな話かというと「衝突」という作品は、ファーストコンタクトと、それにつながる戦争を描いている。一触即発の危機を回避するために登場人物たちがとった行動は涙なくしては読めない。
 表題作においては天真爛漫な少女を主人公にすえ、初の星間旅行に飛び出すユーモラスな冒険物語風に始るのだが、冷凍睡眠から覚めた少女の頭の中にエイリアンが寄生し、お互い意気投合して友人関係を保つかにみえた矢先、思わぬエイリアンの秘密が浮かび上がってくる。この表題作の結末も苦い。だがそれゆえに忘れられない作品となっている。



 というわけで、数少ないSF既読作品の中から今回は『感涙SFベスト3』を選出してみた。ほんとうはここにフイニィの「ゲイルズバーグの春を愛す」も入れたかったのだが、あちらはファンタジーだと思い直して割愛した。あの本も素晴らしい本なのでもし未読の方がおられましたら、是非どうぞ。

 

 ふう~、長かった^^。