読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ジュノ・ディアス「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」

本書で描かれているのは巨漢でオタクの女の子にまったくモテたことのない青年の情けない人生の話ではない。いや、それも描かれている。主人公であるオスカーはSFとファンタジーをこよなく愛し、自らもSF小説を執筆するアニメ狂いでロールプレイング・ゲ…

アイザック・ディネーセン「アフリカの日々」

あまりにも有名な自伝であり記録文学である本書は、著者が農園主としてアフリカで過ごした18年間の出来事を思い出すままに綴ってあるのだが、これがまさに豊穣というしかない読み物となっている。シドニー・ポラックが監督を務め、メリル・ストリープとロ…

カルロス・バルマセーダ「ブエノスアイレス食堂」

原題を見ると「Manual Del Canibal」とある。スペイン語はよく知らないが、それでもこれの意味するところが「食人者のマニュアル」だということはわかる。本書の1行目も以下のような出だしだ。『セサル・ロンブローソが人間の肉をはじめて…

クリフ・マクニッシュ「ゴーストハウス」

母と息子が引っ越してくる。町はずれにある築二百年の古い農場の家だ。喘息の持病をもつジャックは父を病気で亡くして、いまでもそれを引きずって生きている。彼は古い家具や家に触れるとそれを使っていた人々の古い記憶を感じる能力があった。父を亡くした…

鏑木蓮「しらない町」

アルバイトで大阪の吹田にあるアパートの管理人をしている門川誠一は、人付き合いの苦手な映画監督を夢見る29歳の青年だ。彼は管理会社の担当から連絡を受け103号の帯屋史朗の部屋を訪れる。どうやら数日間部屋から出ておらず、異変に気づいた住人から…

石井光太「遺体 震災、津波の果てに」

誰もが知っているとおり今回の東日本大震災では多くの人命が失われた。行方不明者も含めると、その数約二万人だという。そのほとんどの人が津波によって命を落としているのも周知の事実だ。何事もなく過ごしていた平凡な日常が一瞬にして変貌し、地獄と化し…

西村賢太「苦役列車」

西村賢太の本を読むのも、これで四冊目だ。はっきりいってどれを読んでもみんな同じ感触なのだ。一言でいってしまえば、人間的にまったくダメな男である北町貫多の面倒くさくて往生際の悪い日常を描いているだけの作品なのだ。だけども、そうとわかっていて…

沢村鐵「封じられた街(上下)」

その街では不可解な事件が頻発していた。模様をつけるように配置された落ち葉に埋もれた動物の死骸が数多く発見され、子どもたちは神隠しにあい、不審火による火事が起こる。街を行きかう人々の顔に笑顔はなく、空はいつでもどんよりとした雲が覆っている。…

古本購入記  2011年 12月

みなさま、あけましておめでとうございます。旧年中は仲良くしていただいてありがとうございました。本年も、お付き合いのほどよろしくお願い致します。 と、新年の挨拶をすませたところで先月の古本購入記なのであります。先月購入したのは12冊11作品。…