読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

クリフ・マクニッシュ「ゴーストハウス」

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 母と息子が引っ越してくる。町はずれにある築二百年の古い農場の家だ。喘息の持病をもつジャックは父を病気で亡くして、いまでもそれを引きずって生きている。彼は古い家具や家に触れるとそれを使っていた人々の古い記憶を感じる能力があった。父を亡くしたあと時間を忘れて家にある家具を触り、父の面影を追い求めていたジャックの姿に心を痛めた母セアラは、過去とのつながりを断つためにこの家に引っ越してきたのだ。しかし、この家には先客がいた。四人の子どもと一人の母親の霊がその家にいたのである。ジャックは敏感に霊の存在を感じとる。どうして彼らは、この家にとどまっているのか?彼らの過去にいったい何があったのか?ジャックは必死にセアラに霊の存在を訴えるが、彼女は耳をかさない。やがて、霊の動きに不穏な空気が漂いはじめて・・・・・。 
 
 読み始める前に抱いていた想像とはまったく違った読後感だった。ぼくは少年と幽霊との比較的アットホームな交流を期待していたのだ。どちらかといえば、少し感動を盛りこんだちょっとヒューマンドラマ的な内容なのかと勝手に想像していたのだ。しかし、読み始めてすぐにそんな普遍的なテーマの本ではないことが判明する。
 
 すべてここに書いてしまっては、これから読む人がいた場合、興醒めになってしまうので詳細は書かないが本書は独特の展開をみせるのである。作者が用意する「死の世界」の概念や、定番といえば定番なのだが登場するキャラクターの造りが巧みなので、グイグイと物語に引きこまれてゆく。殺したのか?殺してないのか?という一つの謎をひっぱってゆくところを含めて緊張と緩和の構成がうまかったし、明暗の対比がくっきりと成されているところがYAとして十全な機能をはたしていた。また、力技でねじ伏せるような結末が逆に余韻をあたえていて素敵な映画を観終わったような気持ちになった。これは子どもたちに胸をはってオススメできる本だといえるだろう。