読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

森晶麿「奥ノ細道・オブ・ザ・デッド」

イメージ 1

 またまたゾンビなのである。ほんとゾンビ物には目がないぼくなのである。しかもなんとあの松尾芭蕉が出てくるというではないか。表紙をみれば、ラノベ街道まっしぐらのかなりポップな仕上がりなので、普通じゃないのはわかっていたがまさかこんな事になっていようとは。

 

 犬公方といわれた綱吉の時代、元禄。町には『おどろ歩き』という生ける屍があふれていた。のちに大老となる幕府側用人柳沢吉保の発案により『おどろ歩き』は『屍僕(しぼく)』と名づけられ、幕府の命令での奇行とし、人の手によって使役させようということになる。そしてその陰でこのような事態になった謎を探らせるべく芭蕉に調査を命じた。芭蕉は弟子の曾良を伴い秘密を解くべく奥州へと旅立つのだが・・・・。

 

 とこれが物語の概要なのだが全編のほとんどを占める弟子の曾良の語りが気にくわない。なぜか女装が趣味の中性的な美少年として描かれる彼の口調に嫌悪すら感じた。それにくわえて描写の不正確な部分が目立つのも気になったし、始終流れているボーイズ・ラブ的な匂いも好きじゃなかった。これで話がおもしろければまだよかったのだが、それもお粗末なものだった。

 

 本書の作者 森晶麿氏は第一回アガサ・クリスティ賞を「黒猫の遊歩あるいは美学講義」で受賞されているのだが、そちらはどんな出来なんだろうか。内容をみたらなかなかおもしろそうなのだが、いまのところ読むつもりはない。誰か確かめていただけないでしょうか。