読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

野村美月「文学少女と穢名の天使」

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このシリーズ、ほんとうに刊行ペースがはやいよね。なのに毎回毎回これだけの質を保っているのだから

作者の野村美月って人は只者ではないと思うのである。

で、今回メインに語られるのは、待ってましたの琴吹ななせちゃんだ。ぼくは、もうこの琴吹さんと心葉

君のなんとももどかしい関係にヤキモキしていた口なので、今回の巻でおおいに溜飲をさげました。

それにしても、今回は泣けたなぁ。根が単純なものだから、こういうベタな展開が意外と心に響いちゃっ

たりするのだ。

今回の題材はルルー「オペラ座の怪人」。あいにくこの本は読んでないのだが、大まかな筋は映画なんか

で見知っている。毎回様々な作品をうまく焼きなおしてるなぁと感心するのだが、今回はなかなかトリッ

キーにそれが活かされてておもしろかった。誰がファントムなのかが物語のキーポイントになるのだが

それがうまくミスディレクションされてて、まんまとダマされてしまった。

それにしても今回もビターだったなぁ。まさかそういう展開になるとは思ってなかったので、結構辛かっ

た。これじゃあ、ななせが可哀想すぎる。しかし、彼女がいつにも増してしっかりと現実を見つめ、強く

辛い真実に向き合う姿が素晴らしい。それが、この物語の暗く醜い部分をおおいに浄化しているといえる

だろう。

次回はいよいよ美羽の登場だ。せっかく心葉とななせの心が近づいたっていうのに、ぼくとしてはこのま

ま温かく二人を見守っていきたいところなのに、またひと波乱あるのかと思うとななせが可哀想だ。

しかし、この話を語らないことにはこのシリーズは完結しない。どうにも辛いことだなぁ。